葬儀に参列する際、突然の訃報に戸惑うことも多いでしょう。大切なのは、故人を偲び遺族に思いやりを示すことです。服装や言葉づかい、香典の作法など、基本マナーを知っておくことで失礼を避け、安心して式に臨めます。この記事では、参列前に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
葬儀に参列する前に知っておきたい基本マナー
突然の訃報を聞くと、どう行動すればいいのか迷うものです。葬儀は故人を見送り、ご遺族を思いやる大切な場。慌てず、失礼のないようにするためには、基本的なマナーを知っておくことが大切です。ここでは、参列の心構えや香典、挨拶の作法などをわかりやすく紹介します。
参列時の心構え
葬儀は「悲しみを分かち合う場」であり、主役は故人とご遺族です。参列する人は、静かで落ち着いた態度を心がけましょう。服装や言葉づかい、動作はできるだけ控えめにし、場の雰囲気を乱さないようにするのが礼儀です。式場に着いたら、まず受付で黙礼をし、名前を記帳します。香典を渡す際も、声をかけるのは簡単に。「このたびはご愁傷さまです」と落ち着いた声で伝えるとよいでしょう。無理に長く話す必要はありません。
また、葬儀の流れが分からないときは、係の人や周囲の動きを参考にしましょう。焼香や献花の順番を守り、静かに行動することが何よりのマナーです。
香典のマナー
香典は、故人への供養とご遺族へのお悔やみの気持ちを表すものです。金額は関係性によって変わりますが、奇数(3,000円・5,000円・10,000円など)を選ぶのが一般的です。香典袋の表書きは、仏式なら「御霊前」や「御香典」と書きます。神式では「御玉串料」、キリスト教では「御花料」と書くなど、宗教によって使い分けましょう。名前は黒の筆ペンや薄墨のペンで記入します。
お札は新札を使わないのがマナーです。新札だと「前もって用意していた」と受け取られることがあるため、少し折り目のついたものを使います。袋に入れる向きにも注意し、お札の肖像が袋の裏側を向くようにします。
香典は受付で袱紗(ふくさ)から取り出して渡します。袱紗ごと出すのは避けましょう。受け取ってもらうときは、軽くお辞儀を添えると丁寧です。
挨拶と言葉づかい
葬儀では、あいさつや言葉にも気をつけます。「重ね重ね」「たびたび」などの言葉は、不幸が続くことを連想させるため避けましょう。代わりに「このたびはご愁傷さまです」「心よりお悔やみ申し上げます」といった言葉を使います。ご遺族に声をかける際は、相手の悲しみに寄り添う気持ちを大切にします。無理に励まそうとせず、静かに一礼するだけでも十分です。式が終わったあとも、世間話や大きな声での会話は控えましょう。
葬儀での服装マナーと選び方のポイント
葬儀に参列するとき、まず気をつけたいのが「服装」です。派手になりすぎないことはもちろん、場にふさわしい格好をすることが、故人やご遺族への大切な礼儀です。ここでは、男性・女性・子ども別の服装マナーと、略喪服(りゃくもふく)・正喪服(せいもふく)の違いについて、わかりやすく紹介します。
男性の服装マナー
男性は、黒いスーツが基本です。もっとも丁寧なのは「正喪服」で、礼服タイプの黒いスーツに、白いシャツ、黒のネクタイ、黒い靴下、黒の革靴を合わせます。スーツの生地は光沢のないものを選びましょう。一方「略喪服」は一般的な黒いビジネススーツを使うスタイルです。通夜など急なお知らせのときはこちらでもかまいません。ネクタイは必ず黒無地、ネクタイピンやカフスなどのアクセサリーは外すのがマナーです。
女性の服装マナー
女性も黒を基本にまとめます。正喪服は黒いワンピースやアンサンブル、スーツなどで、ひざ下丈が安心です。ストッキングは黒または肌色、靴はヒールの低い黒のパンプスを選びましょう。略喪服の場合は、黒や濃いグレー、紺など落ち着いた色合いの服装でも大丈夫です。バッグや靴も黒にそろえ、光る金具や装飾のないものがよいでしょう。アクセサリーは一連の真珠のネックレス、結婚指輪程度にとどめます。
また、メイクやネイルも控えめに。明るい色やラメは避け、落ち着いた印象を心がけましょう。
子どもの服装マナー
子どもは大人ほど厳しくありませんが、できるだけ落ち着いた服装を心がけます。男の子は白いシャツに黒や濃いグレーのズボン、女の子は黒や紺のワンピース、またはスカートとブラウスがよいでしょう。靴は黒または紺、靴下は白か黒を選びます。制服がある場合は制服で参列してかまいません。
略喪服と正喪服の違い
略喪服は、一般の参列者が着る服装です。黒いスーツやワンピースなど、落ち着いた黒を基調としたものを指します。一方、正喪服は喪主や親族など、葬儀を主催する側が着用するもっとも格式の高い服装です。男性なら礼服タイプのスーツ、女性なら正式な喪服のアンサンブルがそれにあたります。参列する立場によって服装を選び分けるのがマナーです。
参列当日の立ち振る舞いと挨拶のマナー
参列者に求められるのは、故人への敬意と、遺族への思いやりの気持ちです。服装だけでなく、式場での動き方や言葉づかいもマナーの一部です。ここでは、当日の流れに沿って、受付から焼香、挨拶までの基本的な立ち振る舞いをわかりやすく紹介します。
式場に着いたら
式場に着いたら、まずは入口付近で服装や身だしなみを整えましょう。上着やコートは脱いでから受付へ向かいます。会場内では声をひそめ、携帯電話は電源を切るかマナーモードにしておくのが基本です。私語や笑い声は控え、静かな態度を心がけましょう。受付でのマナー
受付では、軽く一礼をしてから名前を伝えます。香典は袱紗(ふくさ)から出して両手で渡し「このたびはご愁傷さまです」「心よりお悔やみ申し上げます」と短く伝えましょう。長い言葉や世間話は避け、混雑している場合は列をつくらず静かに待つのがマナーです。受付が終わったら、式場に入って席に着きます。一般の参列者は、喪主や遺族よりうしろの席に座るのが基本です。案内がある場合は指示に従いましょう。
焼香のマナー
焼香は故人に祈りをささげる大切な場面です。順番が来たら立ち上がり、遺族や僧侶に一礼してから祭壇へ進みます。抹香をつまんで額のあたりにかかげ、静かに香炉に入れます。宗派によって回数が異なりますが、わからないときは一回でも構いません。焼香が終わったら再び遺族の方を向いて一礼し、席に戻ります。このとき、他の参列者の動きをさえぎらないよう気をつけましょう。
挨拶のタイミング
式の前後に喪主や遺族へ声をかけることがありますが、深い悲しみの中にいる人に長く話すのは控えましょう。基本は「このたびはご愁傷さまです」「どうぞお力落としのないように」といった短い言葉で十分です。手を握ったり肩に触れたりするのも避け、軽く会釈する程度が好印象です。式が終わったあとも、会場を出るまでは静かな態度を保ちましょう。外に出たら深く一礼し、故人への最後の敬意を示します。
知らずに失礼になりがちな注意点と配慮すべきこと
葬儀は、悲しみの中で故人を見送る大切な場です。参列する側も、知らず知らずのうちに失礼な行動をしてしまうことがあります。ここでは、言葉づかいやスマホの扱いなど、気をつけたいマナーをわかりやすくまとめました。ちょっとした気配りが、遺族への思いやりにつながります。遺族への言葉づかい
お悔やみの言葉は、短く静かに伝えるのが基本です。「ご愁傷さまです」「心よりお悔やみ申し上げます」といった言葉が一般的で、長い説明や思い出話は避けましょう。遺族は多くの人に対応しており、気力も体力も使っているため、深い話は控えるのが礼儀です。また「頑張ってください」「元気を出して」といった励ましの言葉も避けたほうがよいとされています。悲しみの最中に前向きな言葉をかけると、かえってつらく感じることもあります。
気持ちはあっても、今は「静かに寄り添う」ことを意識しましょう。
写真撮影のマナー
葬儀の場での写真撮影は、基本的に控えるのがマナーです。祭壇や遺影、参列者などを無断で撮るのは、非常に失礼にあたります。たとえ家族や親族でも、撮影する場合は必ず喪主や葬儀社に確認をとりましょう。とくに、SNSやグループチャットなどに写真を投稿する行為は厳禁です。葬儀はあくまで「故人とお別れする時間」です。記録ではなく、心の中で思い出を残すことを大切にしましょう。
スマホ使用の注意点
スマホの電源は、式の前に必ず切るかマナーモードにしておきます。音や振動が鳴ると、読経や焼香の最中に場の空気を乱してしまうことがあります。また、葬儀中にメッセージの返信やニュースの閲覧をするのも失礼です。やむを得ず連絡を取る場合は、会場の外に出て静かに済ませましょう。通夜や告別式では、連絡よりも「心を向ける時間」であることを忘れないようにしましょう。
ちょっとした配慮が心を伝える
葬儀でのマナーは「静かに」「控えめに」「思いやりをもって」が基本です。言葉を選び、動作を丁寧にすることで、自然と故人と遺族への敬意が伝わります。自分の行動が誰かを不快にさせないかを考えることが、最大のマナーです。葬儀の場では、特別なことをする必要はありません。大切なのは、静かに心をこめて見送る姿勢。その気持ちこそが、いちばんの「弔い」になるのです。